御施主様はご夫妻で山登りが趣味でいらしたとのことです。思い出深い山と奥さんが好きだった高山植物を石に刻みたいとご要望を頂きました。

　北アルプスの名峰槍ヶ岳と高山植物のコマクサの写真を基に「影彫り」という技法で石塔本体へ彫り込みました。小さな点を強弱をつけて彫り込むことにより、色の濃淡が出てきます。雲や雪の表現と共に登山道も再現しており、また可愛らしいコマクサの姿も浮き出しました。

　御施主様御一家は当初より、石塔の正面には「ありがとう」と彫ることを決めていました。そして打ち合わせの途上、書道を習っているお孫さんが揮毫することに話が発展していきます。丁度高校受験を控えていたお孫さんでしたがとても積極的に取り組んで下さいました。紙面枠内の指定がある中、自由な発想で優しくしなやかに書いて頂きました。見事な出来栄えです。

満開の桜に包まれた佳き日に開眼式が行われました。

　御施主様が数カ月にわたって参画したお墓がいよいよ除幕となりました。振り返れば写真の選定から始まり、全体のレイアウト検討・文字原稿作成・各種確認等、ご家族皆さんに御尽力頂きました。初めてのご経験で戸惑いもあったかもしれませんが、故人様を中心に家族の結束がより強固になった時間であったと思います。

　私共宮田石材と致しましても、お施主様の姿を通して「お墓つくりの最大のテーマとは何であるか」、「当社はお客様にどう寄り添っていくべきか」を改めて学ばせて頂きました。
　心より感謝しております。