平成23年に実施された「お墓に関する意識調査」の中から、興味深いアンケート結果を3つご紹介しましょう。
この調査は日本学術振興会(文部科学省所管の独立行政法人)の補助金研究として全国2千人を対象に行われたものです。
Q.あなたはふだん、先祖の墓をどのくらいの頻度でお参りしますか。
- ・ほぼ毎日 0.1%
- ・週に1、2回 1.0%
- ・月に1、2回 10.1%
- ・年に5、6回 14.0%
- ・年に3、4回 21.1%
- ・年に1、2回 34.4%
- ・数年に1回 10.9%
- ・ほとんど行かない 8.4%
- ・ほぼ毎日
0.1%
- ・週に1、2回
1.0%
- ・月に1、2回
10.1%
- ・年に5、6回
14.0%
- ・年に3、4回
21.1%
- ・年に1、2回
34.4%
- ・数年に1回
10.9%
- ・ほとんど行かない
8.4%
墓地と居住地との距離にかかわらず、八割の人が年一回以上のお墓参りを行っています。対してお墓参りに行かないという人は一割以下。数字には、お盆やお彼岸の年中行事を通じて、お墓との繋がりを保ち続けている日本人の姿が映し出されています。
次に、現代の日本人は霊魂や先祖の存在をどのように捉えているかについて、データを示してみます。
Q.「人間には霊魂がある」という意見に対して
- ・そう思う 40.4%
- ・まあそう思う 34.4%
- ・あまりそう思わない 15.4%
- ・そう思わない 9.8%
- ・そう思う
40.4%
- ・まあそう思う
34.4%
- ・あまりそう思わない
15.4%
- ・そう思わない
9.8%
「そう思う」「まあそう思う」と答えた霊魂存在肯定派は75%近くにのぼります。
現代社会は「科学万能の時代」と言われて久しく、日々科学技術の恩恵に浴した生活が営まれています。
物質優先の目線を持ちがちな環境にあっても、立証困難な霊魂の実在を認める人々が、たくさんいるというわけです。
Q.「先祖の霊魂は私たちを見守っている」という意見に対して
- ・そう思う 40.3%
- ・まあそう思う 38.9%
- ・あまりそう思わない 13.5%
- ・そう思わない 7.3%
- ・そう思う
40.3%
- ・まあそう思う
38.9%
- ・あまりそう思わない
13.5%
- ・そう思わない
7.3%
特定の宗教への帰属意識が薄いと言われる日本人ですが、こと「ご先祖さま」へ対しては格別の思いを寄せている実態がわかります。
全体のほぼ八割の人々が、先祖からの加護を受けていると感じています。これは「ホトケ」が有する超常的な霊力を強く期待しているというより、先祖へ対する親しみと素直な信頼感がベースにあると考えられます。
2.お墓で絆を結ぶ日本人
上記のアンケート結果は、比較的多くの現代人がお墓参りを通じて、「あの世との良好な関係」を築いている状況を示しています。
また、自身の心情的安定を先祖との関わりから見い出す点も示唆に富んでいます。
もしかすると、生きるヒントが墓の中の先人から届けられることもあるというわけです。
例え話はいずれにしても、日本人の宗教の根核が祖先崇拝であることは周知の通りです。
「ご先祖様のおかげ」との感謝の念や「ご先祖様に顔向けできない」ことを戒める言葉に表れるように、祖霊の存在は道徳や倫理観の礎ともなっています。
世界に誇るべき日本人の誠実さや規範意識の高さは、手厚い教育の反映であることは勿論ですが、祖先崇拝もこれに大きく影響している点を今の時代にこそ、改めて評価すべきではないでしょうか。
この先祖を崇める精神文化の構造には多様な面がありますが、少なくとも遺骨の尊重とお墓づくり、それにお墓参りの実践によって熟成されてきた事実は揺るぎません。
いにしえより日本人は先祖や肉親の遺骨(もしくは遺体)を丁重に扱い、それが納められる場所も大切に守り続けてきました。
近代以降は石塔を建立する習慣が一般的化し、これによって各家における礼拝の対象がより明確になりました。
そして墓参の実践により崇拝の理念が保持、向上されるに至ります。
身近な宗教儀礼であるお墓参りは、言うまでもなく日常的に全国各地で実践されています。身近であるあまり、ともすると無意識に墓前へ足を運び、おきまりとして花を手向けているかもしれません。
しかしその行為は先祖と繋がろうとする高尚な観念の現われなのです。
こうして生命の連続性を認識しつつ、亡くなった身内を上位に据えて敬慕する慣習は日本人の知恵の結晶です。
石塔の前で、眠りに就いた人々との心の交信を以って絆をより固く結び、またこれを確認し合うその姿。
この国で育まれた祖先崇拝は優しさあふれる精神文化であり、これからの日本人がさらに大切にすべき徳目の源であると思います。