●日本人は無宗教?
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読売新聞社が2008年に行った「日本人の宗教観に関する調査」によると、次のような報告がされています。 |
Q.あなたは何か宗教を信じていますか。 ・信じている 26.1 % ・信じていない 71.9 % |
示された数字のみを解釈すると日本人の7割以上が無宗教ということになります。でも私たちの日常生活を見渡すと、ちょっと釈然としません。
お正月の三が日、有名な寺社仏閣には200万〜300万人以上の初詣の人々が押し寄せます。節分には鬼を払って福を招き入れ、彼岸とお盆にはお墓参り、クリスマスにはツリーとケーキで聖夜を迎える。 立派な菩提寺の檀家になっている家々が、結婚式はチャペルで挙げることもよくありますね。 「無宗教」というにはとてもふさわしくなく、むしろ複数の宗教の儀式をかけもちで器用かつ立派に?こなしています。キリスト教やイスラム教の一神教徒はこのような日本人の宗教観が不思議でなりません。 優しく評価すれば、宗教に寛容な国民性と言えますが、ともすると外国の人々からは誤解を招くこともあるかもしれません。 当の日本人でも自身の「宗教への無頓着さ」を改めてながめてみると、笑い話になってしまうほどです。が、しかし、我々日本人には、宗教、神、仏を無自覚に親しむ心の余裕と、その寛容さを支える根源がお墓、仏壇に存在していることを忘れてはなりません。 日本人の無宗教観は、「特定の宗教や宗派、教団には所属していない」という意識であり、「神も仏も信じない」ということとは全く違うのです。 |
●日々の生活に優しく溶け込む祖先崇拝
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前出の調査結果を続けて抜粋してみます。 |
Q.宗教に関することの中であなたがしていることをあげて下さい。
・しばしば家の仏壇や神棚に手を合わせる 56.7 % ・盆や彼岸などにお墓参りをする 78.3 % (この他、厄払いをしに行く 34.2% 子供のお宮参りや七五三のお参りに行く 50.6% 等の回答あり) ・しばしば家の仏壇や神棚に手を合わせる 56.7% ・盆や彼岸などにお墓参りをする 78.3%% (この他、厄払いをしに行く 34.2%、子供のお宮参りや七五三のお参りに行く 50.6% 等の回答あり) |
上の質問は、冒頭の「7割以上が無宗教」との回答を得た質問の後に続くものです。つまり「自分は宗教上信じるものはございません」と言っておきながら、先祖が祀られている仏壇には半数以上が「しばしば」手を合わせ、8割近くの人がお墓参りを欠かさない実態が浮き彫りとなっています。 次に掲げる回答を見てみると、日本人が信仰上支柱としている対象が簡明、瞭然と現れてきます。 |
Q.あなたは、先祖を敬う気持ちを持っていますか、いませんか。 ・持っている 94.0 % ・持っていない 4.5 % |
かねてより数多の宗教学者、民俗学者、研究者から「日本人の宗教意識の根源は祖先崇拝である」と論じられてきました。
今回の調査では、ごく最近の客観的なデーターを以って、一般的な日本人の生の声が表現されています。あえて端的に言ってみれば、 寛厳よろしき先祖教≠ネるものがあたかも心うちに存在するかのようです。 また、「ご先祖様に顔向けできない」との戒めが、まだまだ効力を有する可能性が大きいこともわかり、少しほっとしました。 それにしても、自己の先祖を敬いつつ、道徳と規範の礎として先祖を位置付け、無意識にも感謝の手をあわせている日本人の姿。これは高尚な感性が日本人にあればこそ熟成されてきた知恵の結晶なのではないでしょうか。 頬をなでる風の趣が変わるごと、季節の移ろいと共に彼岸などでお墓参りをする機会が廻って参ります。 多くの宗教は古より哲学、倫理、道徳、文化の構築と進展に寄与してきました。お墓参りも身近にできる立派な宗教儀礼の一環です。 お墓に眠る親御さんや御先祖様が伝えてくれるメッセージを いつもよりはちょっと意識しながら手を合わせてみてはいかがでしょうか。 |
つづく |